「平成30年豪雨災害 真備町の水害1」で示しましたように,真備町の浸水した地域は高梁川とその支流の小田川よりも低い土地で,ハザードマップにも今回のような浸水がありうることがはっきりと示されていました.しかし,よく考えると,そのようなリスクを持った土地は,全国どこにでもあるのです.
例えば,下の図は地理院地図の機能を使ってJR大阪駅周辺の地図に独自の色を付けたものです.標高ゼロ以下には濃い青色を付けています.標高ゼロとは東京湾の平均潮位で,言いかえると,この濃い青色の場所は海面よりも低い場所です.大阪駅から西は,標高ゼロの低地が広がっていることがわかります.
また,この地域は単に標高が低いだけでなく,淀川にも近いため淀川氾濫時には浸水するというリスクもあります.次の図は大阪市のハザードマップです.
淀川が氾濫した場合,大阪駅周辺は5m程度の浸水になることが示されています.このように見ると,高度に都市化された大阪駅周辺は,実は真備町と同じような浸水リスクがあるということがわかります.
日本の都市は,多くは沖積平野に発達してきた歴史があるので,このような水害へのリスクは,多くの都市が持っていると考えられます.次に示すように東京も名古屋も海面より低い土地が都心の真ん中に広く存在しているのです.
この災害は全国の災害リスクへの警鐘
このような現実を見つめたうえで,今回の真備での災害を経験して 私たちの今後のスタンスはどのようなものとすべきでしょうか?
「真備の災害は,決して他人事ではない」ということです.たしかに,真備では戸建て建築が多く,同じ4,5mレベルの浸水でもビルが多い都会では危険性はそんなにないのではないか,という意見もあると思います.しかし,次の写真を見てください.大阪駅のすぐ北に隣接したグランフロントの広場です.この広場の前の道路の標高はほぼゼロメートル.平均海面と同じ高さです.ハザードマップではこの場所は3~5mの洪水や4mの津波が指摘されています.ここに洪水や津波がやってきたら,そこから下に向かうように作られている大階段から大量の水が地下街に押し寄せることになります.
いろいろなインフラが整備され人々が多く集まってくる都会のこれらの場所は,一見,安全なように見えますが,実は非常に脆弱であるということをどれだけの人が理解しているでしょうか.
私の住んでいる神戸市西区の明石川水系の河川は今の防災水準は10年に一度の洪水には耐えられるけれどもそれ以上になると氾濫するレベルです(現在30年に一度レベルにむけて改修工事中).ということはいつ洪水が起こっても不思議ではないということです.河口部には明石市があり,人口が密集しています.
危険だったら住まなかったらよい,という上から目線の考え方でこの問題は解決するでしょうか?私はそうは思いません.なぜなら,そこに多くの人が住んできて,そして今も住み続ける理由があるからです.そこには,平地があり,近くには働く場があります.交通の便もよくなっています.またいくらか危険度がある土地は価格的には入手しやすいという側面もあります.
だからといって災害にならないように日本中どこでもハード面を強化することは不可能です.明石川水系の河川は10年一の水準ですが,表六甲の河川は100年に1回よりも高い水準です.東京や大阪はもっともっとレベルが高いです.結局,その場所の投資効果というものが問われていることになります.
さらにつけ加えると,平成30年7月豪雨は,神戸にとっても紙一重の状態であったことを忘れてはなりません.六甲山の上では900ミリもの雨が降り続いたのです.あと1時間でも50ミリ以上の雨があったら,篠原台だけでなく,六甲山麓の扇状地で大災害が発生していたかもしれなかったのです.(「平成30年西日本豪雨での篠原台の災害-1」)
問題は,そういう土地に住んでいる人たちがそのリスクを理解して住んでいるか,そしてそのリスクへの対応を考えているか,ということです.この視点から,今回の真備の水害を自分事としてよく考えることが重要だと思います.
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