地震による宅地の被害はさまざま

 地震は,地下深くの岩盤がずれ動くことで地面が揺れ動き,その振動が,地表に伝わってきて,被害を及ぼします.したがって,建物の耐震化も重要ですが,建物が建っている宅地の地盤の影響が極めて大きいので,自分の家の下の地面のことについて知っておくことが大切です.

 阪神・淡路大震災においても,多くの住宅地の地盤被害が発生しました.西宮市仁川百合野町地区では,幅100m,長さ100mにわたり大規模な地すべりが発生し,13戸の家屋が地すべりに巻き込まれて34名が亡くなるという悲しい出来事が起きました.また,それ以外でも多くのところで宅地が変形し,住宅に影響を与えました.この大震災で生じた宅地被害は兵庫県下で4800か所もありました.宅地被害としては,地盤がずれたり,擁壁が傾いたりということが起こりました.また,芦屋浜などで液状化が発生し,住宅が傾いたりしました.

 東日本大震災では,津波被害がすぐ思い浮かびますが,このとき,千葉県浦安市では広域にわたって液状化が発生し,住宅が傾くなどの被害を受けました.実は浦安の海岸沿いの住宅地は,前の砂浜から掘り上げた砂で埋め立てていたため,液状化が発生しやすい地盤だったのです.また,仙台市では,津波被害のない内陸部で宅地が被害を受けました.これらの地区の多くは,1978年の宮城県沖地震の際も宅地に被害を受けましたが,東日本大震災でも再び同様の宅地被害を受けたのでした.

 平成28年4月の熊本地震でも,宅地そのものが被害を受けて,建物が損壊した事例が多く発生しています.次の図は,益城町での被災事例ですが,盛土の法面が崩れてしまったために,その上の住宅が被害を受けています.

    益城町での宅地被害の例(太田撮影)

盛土部および盛土と切り土との境目が危ない

 宅地被害がどのような場所で起きているかというと,一般的には,盛土と言われる,地面に土を盛り上げたところの被害が多かったことが報告されています.神戸のような扇状地の場所などは地面が傾斜していますが,住宅の床は水平でなければなりません.そのため,どうしても,土を盛り上げて前には擁壁を作って地面を水平に仕上げることが必要になります.仙台市での宅地被害を調査した結果では,宅地被害は,ほとんどが盛土および盛土と切り土の境界で発生しているのです.その地盤のイメージとして次の図のような事例が考えられます.

地山の上に盛り土をした地盤のイメージ(佐藤真吾)

 この図のような地盤が地震で揺れた場合,盛った土の塊全体が固い地山の境界に沿って斜め前に滑り落ちるような力を受けるため,宅地全体が変形してしまい,その上にある住宅に被害を及ぼすことになります.

地盤品質判定士という人たち

 このように,地面の下の様子を知っておかないと,建物の安全が確認できないということになります.しかし,住宅を購入するときに,ここまで事前に確認しておけるかというと,なかなか素人には難しいと言わざるを得ません.例えば,造成業者が宅地を造成し,そこに建売住宅の業者が家を建てる場合,住宅の建築を担当する業者が,その下の宅地の条件をどの程度理解しているのか,気になるところです.そして,そのできた家を購入する市民は,どれだけの情報を確認できているかというと非常に心もとないものがあります.もし,市民に情報が提供されたとしても,その意味するところを理解することは非常に難しいと言わざるを得ません.

 このような現状を踏まえて,東日本大震災の後,2013年2月に「地盤品質判定士」という制度が発足しました.いままで,非常に重要でありながら,すきまのようになっていた地盤の品質について評価し,宅地の売り主や買い主に説明する専門家としての役割を果たす人たちです.

少なくともこれから住宅を建設したり購入したりする予定がある人は,地盤品質判定士にその宅地の下の地盤について評価をしてもらうことをおすすめします.相談したい場合は,「地盤品質判定士協議会」にお問い合わせください.(同協議会のホームページの「問い合わせ」から,または電話03-3946-8766)

 なお,二つ目の図を見てもわかるように,宅地の地盤の強さは,単に自分の家の真下だけでなく,もう少し広がりを持って評価することが重要となります.したがって,真下の1本のボーリング結果だけでは宅地の安全にとって重要な要素を見逃す可能性がありますので十分な注意が必要です.

 →「地震による住宅被害2 液状化」

 →「地震による住宅被害3 安全な宅地にする」