阪神・淡路大震災後の活断層探し
前回(活断層での地震-1)紹介したように,阪神・淡路大震災を引き起こした「兵庫県南部地震」では,淡路島側では活断層が顔を見せました.そのため,大きな被害が出た神戸から西宮にかけても地表に現れた断層があるのではないかと多くの研究者が調査を行いましたが,見つかりませんでした.あるとき,東遊園地の中に活断層があるという情報があり確認に行きましたが,その付近は地下に大駐車場がある場所で,埋め戻した部分に現れた亀裂だったというような「笑い話」のようなこともありました.
神戸市では,震災後,国の調査費をもらって「活断層調査」を行いました.私もその事務局として参加して,地下の構造を調べたりしましたが,結局は神戸市内では地表断層は見つかりませんでした.芦屋から西宮にかけても兵庫県南部地震の地表断層は見つかっていません.
地下の構造を探る
どのような方法で地下の構造を調べるのかというと,人工的に小さな地震を起こす機械で地面を揺らせて,その反射波を地表でとらえることで,地下の様子を探ります.その時わかった地下の構造の一つが下図です.
これは板宿駅近くの地下の南北方向の断面図で,左が山側,右が海側で,上下の縮尺は強調されています.一番左の場所が,ちょうど須磨断層として知られている過去の断層の位置です.わかりやすいように地層別に着色されています.これを見ると左側,すなわち山側に向かって地下から基盤岩が上昇しています.そして地表までの間に,堆積層が存在します.
堆積層は,過去において,山から送られてきた土砂が蓄積したもので,古いものほど下にあります.一番上に沖積層という比較的新しい時代の堆積物があり,それから下に洪積層という層があります.これだけの厚さが堆積していくためには非常に長い時間が経過していますので,その間の地球の海面の高さの変化や,この場所の地形変化などを反映して実際にはもっと複雑な層になっていますが,この図では簡略化して着色されています.基盤岩から上に堆積した土砂の厚さは厚いところでは1km以上となっています.
活断層がすべて地表に現れるとは限らない
左側の基盤岩のギザギザは昔の地震活動により形成された断層であると考えられます.このかたちから,過去に何回も地震を繰り返したことが推定されます.このような活動の繰り返しが,六甲山を作ったのですね.
兵庫県南部地震の余震の記録などで,このあたりの地下で地震が起こったことは明確なのですが,神戸市の調査の結果明らかとなったことは,その地下の形状変化が地表にまで現れなかったということでした.このように,大きな地震が起こっても地表断層が必ず顔を出すとは限らないのです.図のように厚い堆積層がある場合,その上の堆積層がクッションのような役割をして地下の岩盤の変化が地表にまで届かない場合がよくあるのです.
人間は,目に見えるものに大きく反応します.地表に断層が現れると「活断層」に対しての関心が急速に高まります.しかし,地震は,地下の地球の活動の結果起こっているものなので,地表に出てきたものだけで理解しようとしても難しいところがあります.神戸だけでなく,大阪や東京など,日本の沿岸に形成された都市は,ほとんどが厚い堆積層の上にあります.東京では,堆積層の厚さは4km以上あると言われています.東京では活断層が少ないと言われていますが,正確には「見つかっている活断層が少ない」というべきです.
実は,断層破壊が地表に及ばないような地震ほど,木造住宅に最も影響を与えるといわれている周期1秒程度の揺れが多く発生するという研究結果も出ています.ということは,地表に活断層が出ない地震ほど家が多く倒壊するということです.また,内陸地震の7割が,すでに知られている活断層以外で起きているとの指摘もあります.断層が地表に出ていないからと安心せずに,警戒しておくとことが必要です.
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