2018年9月28日,インドネシアの中スラウェシ州のPalの北部で地震があり,津波と液状化で4000人以上が死亡し(Central Sulawesi disasters killed 4,340 people, final count reveals),700人余りの行方がいまだにわかっていません(NHK NEWS WEB スラウェシ島地震1年で追悼集会 700人余の行方 今もわからず).このとき,地震にともなって非常に大規模な液状化が発生し,まちが一瞬にしてなくなるという大きな災害がありました.下の2枚の写真は,その一つのエリアPetoboの被災前後の写真です.被災前がGoogleマップ,被災後はGoogleEarthです.被害エリアは全長が2km以上あります.
Google Earthにはタイムスライダーという機能があります.そこでこの地点をさらにズームアップして2018年8月17日の衛星写真と2019年10月2日の衛星写真を見比べてみましょう.まずは2018年8月,被災直前の写真です.
そして,2018年10月2日,被災直後の写真です.まったく同じ場所を同じフレームでキャプチャしてあります.街がすっかりなくなり,土砂に覆われてしまっています.
JICAの調査による説明では,次のような図とともに,液状化が発生し,それが原因でゆるい傾斜の地盤に地滑りが発生したとされています.(【図解・国際】液状化に伴う地滑りのメカニズム(2018年10月)JIJI.COM)
このPaluでの液状化について,愛媛大学の森伸一郎准教授は,「Googleクライシスマップによって提供された衛星画像の解析に基づいた2018年9月28日のスラウェシ地震におけるPalu(パル)市内外の地すべり領域と領域内の被災建物・住家の特定」という報告で,大規模な液状化があった場所は3か所(下図)あること,これらすべての液状化したエリアが,きわめて緩斜面であることを速報しています.冒頭のGoogle Earthの場所は,3か所のうちのSouth Palu Petoboです.
Youtubeではこのような動画があります.(Footage shows Indonesian earthquake causing soil liquefaction)これは,その現場にいた人の撮影によるものですが,確かに,家々がすべっていっているように見えます.
何とも恐ろしいですね.この地すべりのような液状化に巻き込まれて多くの家が破壊され,中にいた人たちもなくなりました.壊れたまちの中から多くの遺体を取り出したという報告もあります.
そこでGoogleEarthでPetoboの被災地の断面図を作ってみました.(→GoogleEarthで断面図を作る方法参照)
図中央の東西の赤い線が断面線です.
西側の川に向かって緩やかな傾斜があります. 図は縦が強調されているので,注意して下さい.実際にはもっと緩やかです.その点にカーソルを持っていくと高さがわかります.水平方向の延長2kmで高さ48m程度の非常にゆるい勾配(約2.4%勾配)です.このような極めてゆるい地盤が大規模な地すべりをおこしたのでした.なお,この原因として,産経新聞では下図を掲載していて,すぐ下に粘土層(おそらく火山灰系?)があるとしています.
私は,ここで書いてあるような単なる液状化ではなく,地震による急激な変状が原因で粘土層がクイッククレイ(鋭敏粘土)という現象を発生させたのではないかとの可能性を考えています.クイッククレイとは,動的な衝撃により,粘土層が一瞬にして液体のようになってしまう現象です.今後の研究を待ちたいと思います.