2019年8月27日から28日にかけての九州北部の豪雨で,佐賀県大町では,町が浸水したうえに,工場から漏れ出た油が,氾濫水と合わせて襲い,その地域内の病院が孤立するなどの重大な事態になりました.

 まず,この時の雨量を調べてみましょう.27日の雨量は141ミリ,28日は191ミリ,二日間で330ミリという豪雨でした.これを1時間ごとのグラフにしたのが次図です.

 28日の早朝からは「線状降水帯」がこの付近の上空に居座っていました.

28日朝5時ごろの雨雲レーダー

 今回の場所は下の写真のように,山間から平野部に出てすぐの六角川沿いの場所です.

 この川は,すぐ東の有明海に流れていますが,大町の順天堂病院付近で標高約2m,直線距離で9km先の河口は,標高1m足らずという低地で,六角川の勾配は極めて緩く(1/9,000よりも緩い),また,出口は海面よりも低いため,川の排水は排水ポンプの能力に依存するという場所です.このような場所に,豪雨が襲い浸水(内水氾濫)したのでした.

 そこで,この場所の標高を地理院地図の「自分で作る色別標高図」の機能を使って色分けしてみました.川の蛇行部に順天堂病院,西に,油を流出した佐賀鉄工所があります.色分けしてみてわかったのは,このエリアの東,大町駅の近くに小高い土地があり,油が流出した氾濫水はここで止まっていると考えられます.このような地理的な要因が,下流に油を拡散させることを止めることができたのでした.

 鉄工所の油は,工場内に保管していた油に氾濫水が入り込みあふれたということでした.実は30年前にも同様の災害があり,対応を十分にしていたつもりであったのに,また起こってしまったとのことです.(佐賀新聞Live)
 2,018年の西日本豪雨でも真備町のすぐ北の総社市でマグネシウムが爆発するという災害がありました.このように,災害は,複合化した思いもかけないものが起こるということでしょう.被害を軽減するために,いろいろな可能性を考えておくことが重要です.

なお,この災害では,すぐ北のボタ山わんぱく公園の西斜面で,ボタ山が崩壊して住民が避難するという災害が発生しました.

佐賀テレビ

 ここは,石炭を取った後残った土でできた山で,この映像から下図のような場所で崩壊が起こったものと考えられます.この斜面のポリゴンのkmlファイルはここからダウンロードできますので,そのファイルを地理院地図かGoogle Earthにドロップすれば位置がわかります.

 

※令和2年5月に土木学会水工学委員会の「令和元年8月佐賀豪雨調査報告書」が公表されました.

 → 2019年8月九州北部豪雨 武雄JCTでの路面被害

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