大震災とガレキ
阪神・淡路大震災では,多くの建物や構造物が倒壊しましたが,それらのガレキは,まちの復興の障害となります.この大震災で発生したガレキの量は2000万トンという膨大なものでした.まちを復興するためには,まず,発生した大量のガレキを除去しなくてはなりません.密集した都市部で,ガレキをどのように処分するかが,復興のための緊急の課題となりました.
90年以上前の関東大震災(1923年)のときも,同様に,大量のガレキが発生しました.その時のガレキは海岸部に埋め立てられ,横浜の山下公園や,東京湾岸の豊洲,東雲などの土地が生まれました.そして,結論から先に述べると,阪神・淡路大震災では,神戸港内に,ガレキの埋め立てのために450ヘクタールの海面が提供され,新しい土地が生まれたのでした.
準備中の神戸港の新しい計画
実は,大震災当時,神戸港では新しい港湾計画の手続きのため,いろいろと準備が進んでいました.震災の1年前に長時間かけて検討された神戸港の「長期計画」がやっと策定されたことを受けて,それに基づいて,その中のいくつかのプロジェクトを実施していくための準備中でした.その中身は,一つは,古い神戸港のエリアの再開発計画です.新港の第4突堤から西の地区は,突堤の形は保存しながら物流機能は廃止し,客船やフェリーのターミナルなど人流を中心としたエリアに変えていくこととしましたが,その一方で,新港第5突堤から東の新港東地区や摩耶埠頭などは,新しい物流の要請にこたえるため,突堤間を埋め立て,港湾の陸地の機能を強化するという計画です.もう一つは,より最新の港湾機能を創出するため,六甲アイランドの沖合に人工島を作る,という計画です.
これらの計画は,具体的に事業として進めていくためには,市が独自に策定した「長期計画」では十分ではなく,法律の手続きに基づいた「港湾計画」を定め,次に,「埋立免許」を得るということが必要となりますが,震災の時点では,まだこれらの手続きはできておらず,海事関係者などとの調整を行っている最中でした.
実施にいたるまでの迅速な対応
このようなときに,大震災が起こったのです.このとき,港湾行政を管轄する運輸省では,「大震災を機に,今計画中の神戸港の計画を一から見直すべき」という声があがりました.しかし,神戸市側は,「今進めようとしている神戸港の計画は,何年もかけて検討してきたもので,現時点でこれにまさる計画はない,この計画を早期に実施に移すことで,復興の要であるガレキの処分も可能となる」と主張し,事態はこう着したかに見えました.しかし,神戸市港湾局と運輸省のトップ同士で話し合い,神戸市の方針ですすめることで合意しました.震災後わずか8日後でした.
方向性は定まっても,ガレキを海面に埋め立てるためには,海事関係者との協議を整え,港湾計画の審議会を開催し,埋立免許を取得する,という手続きをクリアしなければなりません.そのかなめである神戸市での港湾審議会が1月30日に開催されました.震災後2週間もたっておらず,遠方の委員が神戸まで来る交通手段もままならない状況でしたが,運輸省が大阪からメリケンパークまでヘリコプターを飛ばしてくれました.このような迅速な対応により,3月31日に埋立免許を取得し,新港突堤や摩耶埠頭などの突堤間にガレキを埋め立てられるようになったのでした.写真は,埋め立て中と完成後の新港東地区です.
神戸港でこのように埋め立てができたのは,たまたま震災前から計画を準備していたので,なんとか間に合ったわけですが,大きな災害が起こったら大量のガレキの処分をどうするのかを事前に計画しておくことが重要です.
ガレキで突堤間を埋め立て中の新港東地区
ガレキでの埋め立てが完了した新港東地区
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