阪神・淡路大震災から四半世紀を経過しました.このたび小林郁雄さんがこれまで収集した自分の資料をひとまとめにしたデータをいただきました.この中からいくつかをご本人のコメントもいただきながら紹介していきます.

小林 郁雄(人と防災未来センター上級研究員、兵庫県立大学特任教授)
神戸大学工学部建築学科卒業。大阪市立大学大学院工学研究科都市計画専攻修了。 都市・計画・設計研究所勤務。地域計画、市街地整備、住民主体のまちづくりまで 幅広く都市プランニングを専門とする。1986年にコー・プラン(CO-PLAN, Inc.)を 設立。阪神・淡路大震災後は、被災地の復興に多く携わる。1995年、阪神大震災 復興市民まちづくり支援ネットワークを立ち上げ、世話役を務める。現在は人と防災 未来センター上級研究員、兵庫県立大学特任教授。 

 ここで紹介するのは,震災直後,きわめて早い時期に阪神間の都市計画関係者が,被災地の現状把握がまずは重要であるとの認識から,千人以上がかかわって作成された被災地の地図です.ここでは,その神戸市の分を紹介します.

   神戸市被災図(東部)jpg
 神戸市被災図(西部)jpg
 住宅地図1ページごとのデータZipファイル (神戸市分を30分割した図)

 後日まとめられた報告冊子の序文で紙野桂人先生(大阪大学,故人)が次のように述べています.

「阪神・淡路大震災が発生した直後から、大災害の中心にある神戸地区の大学をはじめとし て、関西、東京そして全国にわたる各大学都市計画研究者は、それぞれに被災の実体把握とやがて来るであろう復興に向けての学術的貢献にむけて、様々な活動を起こし始めていた。
 日本都市計画学会学術委員会・日本建築学会都市計画委員会と関西グループの間で、それら個別の研究者の努力を統合化しつつ、淡路島から阪神地域数十キロメートルに及ぶ市街地の建築物被災の全体像を客観的にデーター化することを目標として、組織的な行動を起こすことについて意見交換を開始したのは、1月20日の夜半であったと記憶している。そして1月24日、両学会本部委員会の意向を基礎として、日本都市計画学会関西支部を核とする震災復興都市づくり特別委員会の準備会を結成し、直ちに本格的取り組みの検討にはいった。この緊急の会合を成立させたのは、土木工学・建築工学・造園学など多方面にわたる都市計画研究者が、この巨大な都市破壊に立ち向かい、専門家としての責任を果たそうとする良心以外の何者でもなかったと思う。
 特別委員会が組織されると同時に、被害実態緊急調査への取り組みが開始された。各学会を通じての広報の効果もあり、全国の大学関係者、学生、建築・都市計画専門家のボランタリーな参加は驚くべき速さと確実さで実行された。その延べ千人にのぼるボランティアの努力の成果がこの出版物に結晶している。」

この地図の位置づけは以下の通りです.
本図集は、阪神・淡路大震災による建築物被害の地域的な広がりを把握する目的で、神戸大学、神戸芸術工科大学、大阪大学、大阪市立大学、大阪芸術大学、近畿大学、京都工芸繊維大学、京都大学が中心となり、全国からの多数のボランティアの協力を得て、被害実態緊急調査を行なった成果をとりまとめたものである。
1.調査区域
1)第1地域:西は神戸市須磨区から東は西宮市までの、被害が集中しているおおむね 山麓線以南で埋立地以北の地域(1部の地域では埋立地をふくむ)。
   調査時期:1995年2月1日~9日
2)第2地域:第1地域につらなる西は明石市、神戸市垂水区、須磨区北部、東は尼崎市、伊丹市、宝塚市、および淡路島のうち、被害が集中している地域。
   調査時期:1995年2月10日~3月13日

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