液状化の被害

 これまでお話ししてきたように,建物の耐震性がいくら高くても,基礎が地震に弱いと,被害を受けます.前回の宅地斜面の崩壊のほかに,地震により地盤が液状化しても住宅は大きな被害を受けます.この液状化は,地震のたびに多くのところで起こってきました.液状化被害は,建物が傾いたり,沈下したりして住めなくなるという事例が多く発生します.

 日本での過去のたいていの地震では,液状化が起こりました.1964年の新潟地震や2007年の中越沖地震では広範な地域で液状化しましたが,ここはもともと砂丘のあったところにできたまちでした.1995年の阪神大震災でも,芦屋市の埋め立て地で液状化が発生し,家が傾くなどの被害を受けましたし,ポートアイランドでも砂が吹き上がる噴砂現象がありました.2011年の東日本大震災では,震源から300km離れた浦安市で大規模な液状化被害が発生しました.浦安市は,市域の4分の3は前面の海底の砂で埋め立てられた土地でした.2016年4月の熊本地震でも,火山灰でできた地盤のために,広範囲で液状化による被害が発生したことが報告されています.

 さらに2018年9月の北海道地震では,札幌市清田区で地盤が液状化し住宅に被害が出ました.(たとえば「平成30年北海道胆振東部地震で発生した液状化被害等に関する専門家派遣結果(概要)」)そして,このすぐあとにおこったインドネシアのスワレシ島の地震では,Paluという町で2kmにわたる広範囲の液状化が発生し,町全体がなくなってしまいました.その時の映像もYoutubeに公開されています.

液状化とはどういうことか?

 では,液状化とはどういうことでしょうか.簡単に言うと,地盤の中に地下水が存在する緩い地盤が地震で揺すられると,その中の砂が水に混ざり液体と同じような状態に一瞬なることにより,水圧が高まって砂が吹き出したり,浮力が高まって,地下の物を浮き上がらせたりする現象です.

液状化が起こる条件は,
①地下水位が高いこと.
②比較的粒子の大きさが揃っているような砂でできた地盤で,しかも,あまり固くない場合.
③一定以上の強さの地震の揺れが起こる.

 この3つが揃うと地盤は液状化します.逆に言うとこれらの条件がそろわない場合,すなわち,地下水がない地盤では液状化は起こりませんし,地盤の粒子が大きかったり,不揃いであったりしたら液状化は起こりません.そして,液状化を起こさせる強さ以下の揺れでは液状化は起こりません.
東日本大震災で大規模な液状化が発生した浦安市の被災地は,前の砂浜から砂をポンプで運んできて埋め立てて造成していて,これらの3条件がすべて当てはまります.また,新潟地震や中越沖地震の被災地は,砂丘にできたまちであり,地下水が低い場合には液状化しやすい場所でした.(なお,2018年の北海道地震で液状化した札幌市清田区やインドネシアのPaluでは,直下の火山灰の地層が瞬間的に強度をなくす「quick clay」現象を起こした可能性も考えられます.)

 液状化が起こると,いくつかの現象が現れます.液状化が起こった瞬間に,地盤の中の水圧が高まるために,地盤内の砂が水と一緒に吹き出します.これを「噴砂」と言います.砂が出た後,液状化がおさまり,地面の中は地震前よりもしまった状態になるので,地盤が「沈下」します.このとき,全体がうまく水平に沈下してくれればいいのですが,「不等沈下」が起こると床が傾きます.人間は,水平に対して敏感なので,傾いた床では住むことができません.また,液状化が起こると,一瞬浮力が大きくなるため,地下の物体,例えばマンホールや地下室などが「浮き上がり」ます.この写真は,浦安市での浮き上がったマンホールの写真です.

液状化で地下から浮き上がったマンホール(浦安震災アーカイブ)

 この「噴砂」「沈下」「浮き上がり」以外にも,深刻な現象が起こります.地下の地盤が広範囲に液状化することと,地震の揺れる力が加わることで土の塊が横に流れるように移動します.これを「側方流動」といいます.これが起こると,地下の杭が折れてしまったり,岸壁が大きく前に滑り出したりします.

 日本では,都市は,河口の堆積平野に発展しているため,液状化の危険度が高い場所がきわめて多いのです.次の図は,液状化の危険度を表わしています.東京,大阪,名古屋の大都市部は極めて液状化の危険度が高いことが見て取れます.

東京工業大学 松岡昌志

 液状化は,比較的広範囲に起こりますので,1軒ずつの個別の対策では効果がありません.ある程度の広さのある地域全体での対策が必要となります.

 →「北海道胆振東部地震での札幌の液状化

→「2018年スラウェシ地震での大規模な液状化