震度と住宅の強さ

全壊率曲線

 神戸市では,震災の帯が六甲山ろくの市街地のど真ん中を貫いたため,阪神・淡路大震災のときの震度別の被害を調べるのは難しいですが,西宮市は,南北に長く広がっており,震度もある程度ばらつきがあるため,震度と被害の関係を調べるには重要な情報となりました.この西宮市のデータやその後の地震のデータも加えて,内閣府や気象庁などでも全壊率曲線が紹介されていますが,東京都が紹介した全壊率曲線は,これらの情報をもとに非常にわかりやすく整理されています.下図がその全壊率曲線です.

建築年代別全壊率曲線(「南海トラフ巨大地震等による東京の被害想定」 平成25年5月東京都)

 これは,阪神・淡路大震災での西宮市のデータにその後のいくつかの地震でのデータを加えて,建築年代別に統計処理したものです.このように1本の線で示されていますが,実際には,倒壊した木造建築の個々のデータにはばらつきが大きく,あくまでもその中心を代表的な曲線としてあらわしたものなので注意してください.

 ここでも昭和56年以前(赤色系)と以降(緑~青系)で大きく二つのグループに分かれているのが見て取れます.「震度5強」になると木造建築の全壊家屋が発生し,古い家屋では6強になると倒壊の危険が相当高いということがわかります.

新耐震基準

 このように,建築物の強さが変化するターニングポイントというべき重要なエポックが,昭和56年に施行された新しい耐震基準でした.地震の多い日本では,それ以前からも,地震対策は世界を先導する水準でしたが,1978年の宮城県沖地震では,最大震度が5(強震)であったものの,7400戸もの建物が全半壊するなど大きな被害が発生しました.そこで,その被害を検証して建築基準を見直して作られた基準がいわゆる「新耐震基準」とよばれるものです.(その後,阪神・淡路大震災の被害を検証して「新・新耐震基準」が作られました.)

 今,もっとも関心が高い南海トラフ巨大地震では,神戸市付近での震度はどのように想定されているかをみてみると,垂水区や明石市では最大で震度6強,その他の区でも震度6弱となっています.この地震で倒壊する住宅は神戸市内で2716棟と想定(兵庫県の試算)されています.今回紹介したグラフや南海トラフ地震での予測が鳴らす警鐘についてよく考えてみることが今,必要になっていると思います.

 →「震度について」

 →「新・新耐震基準=2000年基準」