震災で被害を受けた住宅

阪神・淡路大震災での被害を図示したのがこの図です.(「神戸市被災地図」参照)
赤い色が全壊です.帯状に被害を受けていることがわかります.

この被害で多くの人が亡くなりましたが.その場所は下図のように9割が木造低層の住宅での被災でした.

阪神・淡路大震災:神戸市における死亡者発生要因分析」筑波大学 熊谷ほか P.129表3から作成

 

なお,まちにある建物の構造種別は,一般的にはこれほど木造に偏っているのではなく,例えば平成5年の全国平均では,木造は耐火も含めて7割弱程度です.神戸の場合は平均よりも都市化が進んでいるので,さらに木造比率は小さかったと考えられます.

「住宅の現状」(総務省統計局)から作成

しかし,だからといって,木造住宅がすべて壊れたのかと,短絡的に考えてはいけません.被害の場所について,もっとズームアップしてみましょう.下図はJR六甲道周辺の被害です.

 震災の帯と一言でいいますが,よく見ると,被害が大きいブロックとあまり被害がないブロックが混在していることがわかります.

 このような被害の差はどこからくるのでしょうか?住宅の被害を決める要素は

<地震の強さ><建物の強さ>の両方に関係します.

<建物の強さ>という点では,阪神・淡路大震災において神戸市で地震で壊れて滅失した住宅の数を建築年次で整理したグラフがこれです.築30年以上の建物は弱かったこと,そして年次が新しくなるほど壊れにくく,特に新耐震基準以降では,被害が少なかったことがわかります.下図は神戸市と建設工学研究所がとりまとめた「阪神・淡路大震災と神戸の地盤」(P.71)に掲載されている,震災で壊れた住宅の建設年次別のグラフです.

 この傾向は,神戸市だけでなく,阪神・淡路大震災の被災地で同様でした.そこで,震度分布が全市で幅のある西宮市などのデータを加えて次のような図が作成されました.(内閣府「東南海・南海地震防災対策に関する調査報告書」(2004)にもとづき作成)新耐震基準以降の家を新築年,1960年以前のものを旧築年,それ以降で,新耐震基準以前のものを中築年としています.プロットした個々の点はばらつきが大きいですが,その標準曲線も示されています.特に,新耐震以降の新築年のものの被害が小さいことが特徴的です.

内閣府平成22年版防災白書 木造建築物の全壊率テーブル

 一方,地震の強さという場合,断層の位置や割れ方,地下構造なども関係するため少し複雑になります.地震の強さついてには,特に,地盤によって波が増幅するということを知っておく必要があります.下図は,防災科学技術研究所のJ-SHIS地震ハザードステーションというシステムで近畿地方について作成したものです.都市平野部は,地盤により倍以上揺れが増幅されることがわかります.これは,平野部の堆積層が揺れを増幅するためです.

 このように,地震の揺れにおいては,その場所の地盤情報を知ることが極めて重要になります.そのため,神戸市では,神戸JIBANKUNという地盤データベースを構築し,データを公開しています.

 →「震度と住宅の強さ」

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