活断層が動いた場合の住宅被害

 これまで,何回かにわたって活断層のお話をしてきました.これまでのポイントを整理してみると, ①熊本地震も阪神・淡路大震災の地震(兵庫県南部地震)も,直下の活断層が動いたことによる地震災害であった. ②活断層は,地表に姿を現すこともあれば,地下に隠れたままであることも多くある. ③活断層被害を単純な線でとらえることはできない. ということでした.次に私たちにとって一番知りたいのは,では,どのようなところにある住宅が危険なのか,ということでしょう.

 例えば,有名な野島断層の断層記念館のメモリアルハウスとして保存されている河野道信さんのお宅は,活断層に直撃され,鉄筋コンクリートの家は持ちこたえましたが,内部はぐちゃぐちゃになった状態が保存されています.しかし,その断層線上のすぐお隣の河野義男さんの母屋は,内部の調度品もまったく無被害でした.すぐ近くのお堂もほぼ無被害でした.活断層に近いからといって,強烈な揺れに襲われたとも一概には言えないようです.

 前号でお見せした図の都賀川東部をもう一度見てみましょう. 非常に広い幅で被害が出ているのがわかりますが,一方で,被害が集中している地域のすぐ隣にあまり被害のない地域があるのがわかります.「震災の帯」とよくいいますが,よく見てみると,実際には,単純な帯状ではなく大きい被害が縞状になった帯であることがわかります.

 このような建物被害の濃淡はどのような要因が影響しているのでしょうか.その要因は大きく二つに分けられます.一つは,揺れの強さで,ここでの揺れが強かったり弱かったりしたのではないか,ということです.もう一つは,建物本体の耐震性能の差が表れたのではないかということです.図は,これらの要素の複合的な結果であり,まさに「複雑系」としての事象の現れであるとみることができます.

揺れを増幅する地盤

 この前者の揺れの強さのうち,大きな影響があると考えられるのは,地盤の性状です.地震の波は,伝わるときに,比較的軟弱な地盤の場合,揺れを増幅することがあります.次の図は防災科学技術研究所が提供している「J-SHIS」というシステムを利用して表示した各地の地震増幅率の図です. 緑色がほぼ1強,青い色になるほど1以下(すなわち基盤岩の揺れよりも地表では小さくなる)ですが,一方,赤い色になるほど増幅率が強く,大阪市のあたりの濃い赤では2以上ですので,地下深くの基盤岩の揺れが地表ではほぼ2倍に増幅されるということになります.神戸の六甲山の麓あたりでも1.5倍程度に揺れが増幅されやすい地域であることが見て取れます. この理由は,大阪湾の阪神側では,淀川などの河川からの堆積物や,六甲山からの土砂が,海岸線近くに厚く堆積しており,この比較的緩い堆積土砂が揺れを増幅しているためです.このような状況は,東京や名古屋でも同様で,日本の大都市はほとんどのところが地震の揺れを増幅しやすい地盤上に発達してきたといえます.

 神戸市では,このような現象を究明するために「神戸の地盤研究会」を立ち上げ,研究を続けています(現在の研究会の名称は「神戸の減災研究会」).その研究のおおもととなる地盤の性状を「神戸JIBANKUN」というソフトを開発してデータ整理を行い,それを利用してこれまで多くの研究をすすめてきましたが,建物被害の重要な要因として住宅の下の地盤が影響を与えていることが明らかにされています.

 揺れの強さは,地盤の影響以外にも,岩盤の割れる方向にも左右されます.一般的にいうと,割れ初めの点から,岩盤の割れる方向に向かっていく地域は揺れが強くなるといわれています.また,地震の波の揺れ方の特性によっても構造物への影響が変わってきます.これについては次号で説明しましょう.

→ 住宅に危険な地震の波の種類