雨の降り方
雨の降り方を理解しておくことは,それへの対応を知るためにきわめて重要です.皆さん方も経験的に感じていると思いますが,雨は,決して一様に降り続けるのではありません.風がビュービューと息をするように吹くように,雨も,強い雨がザーッと降ったり小康状態もあったりして,強弱があります.1時間にある量の雨が降ったとしても,その都度の強さが違います.そのため,雨の瞬間的な強さを表す「単位」が必要になります.そこで,ある何分間かに何mmかの雨が降ったとすると,それと同じ強さの雨が60分間降り続いたものとして換算した量を「降雨強度」として示すことになっています.例えば10分間に5mmなら1時間では6倍となるので10分間降雨強度30mmと表現できます.この降雨強度をもとに,10年に一度くらいの豪雨の場合の確率を雨が降り続く時間で整理したものが次の図です.
このグラフの神戸を見ると,10年に一度の雨の10分間の降雨強度は110mm程度ですが,60分になると,50mmに減っています.雨の降り方は,非常にランダムなので,ばらつきを考える必要がありますが,対象の時間が長くなるほど平均化されて,降雨強度が小さくなっていくのです.また,雨の降り方は各地域で異なるため,東京の場合は神戸よりも強い雨がよく降ることがわかります.
なお、神戸市の降雨強度式はかなり古い統計データをもとにされていて、最近の豪雨の状況を反映できていないため令和4年に下図のように変更されました。(「雨水浸水対策基本方針」令和4年神戸市建設局)
これにより、時間が短い場合の10年確率降雨強度はかなり大きくなっています。
注意しておきたいのは,気象庁の発表での雨量は通常,特にことわりがない限り,1時間雨量を言っています.したがって,気象庁の雨量以上の強さの雨が短時間ではあるということも理解しておかなければなりません.
側溝は必ずあふれる
さて,このグラフから,豪雨の時にどのような現象が起こるのかを知ることができます.すなわち,我々の周りの降雨排水機能の最も身近なものは側溝ですが,側溝の水は,本当に短い時間で集まってくるので,対象となる時間は短いため,そこで考えるべき降雨強度はきわめて大きいのですが,あまり大きなものは設置できません.雨水が流れて行って,それが小さな川になり,やがて大きな本流になるにしたがって,集まってくる平均的な時間は長くなるので考えるべき降雨強度は急激に下がってきます.このことから,身近な側溝は,一時的には必ず溢れる(冠水)ことを避けられないのです.
防災リテラシーが財産を守る
私がある建設事務所で仕事をしていた時のことですが,かなりの豪雨が降った翌日,あるマンションの管理組合の方が訪ねてこられました.その大雨でマンションのエレベーターホールが浸水し,エレベーターが使えなくなってしまったとのことでした.さっそく人をやって確認させましたら,なんと,そのエレベーターホールは側溝からさらに掘り下げた地盤面(おそらく昔田んぼだったところをそのまま開発したものと考えられます)に入り口があり,側溝との境界には擁壁も何もない状態でした.「側溝は一時的には必ずあふれる」ということを知っていたらこのような災害は防げたはずです.このマンションは10階建てで,1級建築士さんが設計しないと建てられないのですが,それだけの技術を持った建築士でも防災の基本的な常識を持っていなかったということです.この災害は,防災の基本を少し知っているだけで十分防げたものでした.本当に残念でなりません.
このように側溝は,身近な防災の第一歩です.側溝を流れやすい状態に維持しておくことは防災の基本です.まずは自分の家の周りの側溝を良好な状態に保っておきましょう.
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