六甲山での土砂災害対策の歴史
開港から昭和初期までの対策
これまでもお話ししてきましたが,六甲山は崩れやすい土でできていて、急斜面の山裾に広がった扇状地には、多くの人が住んでいる表六甲の市街地があるということです。このようなことから、1868年に神戸港を開港してまちが発展していくなかでも、この扇状地を災害から守るために、さまざまな対策が行われてきました。
まず、前回紹介したように、外国人居留地を作ってすぐに、そこに隣接して流れていた生田川の付け替えが行われました。川の付け替えという大工事は、それから30年以上たってから、湊川でも行われました。湊川での度重なる洪水が港を埋没させてしまうため、流路を付け替えることになったのです。湊川は、ちょうど今の川重神戸工場のあたりにもともと流れ込んでいましたが、菊水橋付近から流路を変えて、苅藻川の方に流れ出すように付け替える工事が1901年から行われました。そのときにできた旧河川敷が「新開地」で神戸市民の娯楽の一大拠点となったのでした。
土砂の供給源である六甲山は、神戸港の開港当時は、まったくのはげ山であったようです。六甲山災害史(兵庫県治山林業協会)
図は、明治20年の参謀本部陸軍部測量局の地形図をもとに見やすく着色された地図ですが、山頂付近はすべてはげ山で、市街地との間には、ほんとうに狭い幅の林地しかなかったということがわかります。これは、江戸時代に、薪や松根油などにするために山の樹木を取りつくしたためと言われています。
六甲山災害史(兵庫県治山林業協会)
写真は、大正末期から昭和初期ころの六甲山でのドライブの様子ですが、急な斜面には木がまったくありません。このように、あまりにも荒廃した山が市街地の背後にあったことが、水害の被害をさらに大きくしていたために、明治35年から生田川上流の中一里山の防砂植林が開始されるなど、植林事業が行われ、六甲山の緑は、徐々に回復していくこととなりました。また、植栽事業とあわせて、斜面を小段にしたり、小さい谷に小堰堤を作るなどの治山工事も並行して行われました。
阪神大水害の後の復旧保全工事
昭和13年の阪神大水害は、このような治山工事を細々とやってきたことに対して、強烈な一撃となりました。そのため、六甲山の防災のための総合的な対応が必要となりました。阪神大水害後の神戸市の復興計画では、治山と治水を一本化した「神戸市百年の大計」である復興計画が作られ、総合的な防災対策が行われることになりました。それは、山に植栽をすることをはじめ、渓流、河川への防災対策、土石流を食い止める砂防堰堤、山麓沿いや河川沿いの道路や公園の建設など、多方面にわたった総合的な復興事業でした。
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