令和3年7月1日からの豪雨で熱海市伊豆山の逢初川上流で斜面が崩壊し大規模な土石流が発生しました.

 国土地理院ではその崩壊場所と土石流による土砂が流れた場所を航空写真から読みとり概要の輪郭を「令和3年(2021年)7月1日からの大雨に関する情報」として公表しています.このページの「崩壊地等分布図及び土砂堆積範囲図」において土砂堆積範囲を地理院地図で見ることができます.

 また,そのGeoJSONを入手できます(zipファイルなので解凍してください).地理院地図にそのGeoJSONをドロップすれば展開されます.地理院地図にある色別標高図や赤色立体地図で見ることで,土地の凸凹と土石流の関係がわかります.また,重ねるハザードマップではGeoJSONも扱えますので,そのファイルをドロップするだけで,土砂災害警戒区域などとの関係を見ることができます.

 Google EarthではGeoJSONは扱えないので.kmlファイルに変換する必要があります.変換するには,いったん,地理院地図にGeoJSONを展開してから,kmlファイルで保存しなおすことで簡単に変換できます.(「地図で防災 3 地理院地図で作図したり調べたりする」を参考にしてください.) 下図のようにGoogle Earth上に展開することで,衛星写真と土石流の関係がはっきりとわかります.こうして見ると,非常に多くの家屋が土石流の影響を受けたことがわかりますね.また,この土石流が発生した渓流は,普段は災害のことなど気にもかけないような非常に小さな川であったことが,Google Earthの写真でわかります.あのような災害が発生することをなかなか想像しにくかったと思います.

 また,地理院のGeoJSONデータから土石流の流路の中心のパスを作成しGoogle Earthで縦断図を作成してみました.
(土石流の中心線をここからダウンロードできます) Google Earthのパス名があるところを右クリックして「高度プロファイルを作成」をクリックすれば縦断図が作成されます.新幹線までで落差が約360m,勾配は約18%.途中であまり変化はないですが,屈曲部で一部少し緩くなっています.これだけの勾配なので,下まで勢いが持続し,あまり減衰しなかったんですね.

熱海市伊豆山での土石流の中心ラインとその高度プロファイル

 今回の熱海の土石流と2014年広島土砂災害における安佐南区八木での土石流の勾配を比較してみました.広島土砂災害のデータは地理院の「平成26年(2014年)8月豪雨による被害状況に関する情報」の中に「KMLファイルのダウンロード(LZH形式:92KB)【空中写真による写真判読図】」からデータを入手できますので,これから被害範囲を地図上で表示できますし,あるいは,地理院地図をひらいて,左上の地図のアイコンをひらき 「近年の災害」→「台風・豪雨等」→「平成26年8月豪雨」→「広島市内」→「写真半読図」で被害区域のポリゴンが出てきます.この方法で開いた八木の土石流の図から中心線を作図してkmlファイルで保存してからGoogle Earthで開き「高度プロファイルを表示」させると下図となります.なお,この中心線のkmlファイルをここからダウンロードできます.

2014年広島土砂災害の八木での土石流と高度プロファイル

 これら2つの高度プロファイルを発生地点から下流端まで,距離と高さを読み取ってグラフにしたのが下図です.

 二つを比べると,上流部では広島八木の方が勾配が急であること,また,熱海の勾配は下流部でもほとんど変わらないことがわかります.熱海では,下流部まで勾配が急であったために,下流端近くの新幹線高架付近でも,まだ家を流す力があったと考えられます.流れ下った距離も熱海の方が長いです(このグラフでは熱海の末端は新幹線高架までとしましたが実際は海岸まで延びています).それと,開始地点の標高がほとんど同じであったことが驚きです.

 地理院地図の断面図の機能でも同様のことができます.「2つの断面図を散布図で比較する」にその方法を詳しく解説していますので参考にしてください.

 「自分で作る防災マップ 2 ハザードマップの留意点」でも書いていますが,土石流は,今回の事例でもよくわかりますが,どんどん下まで流れていくので,土石流の危険渓流付近にお住まいの方は,そのことを想像力を持って理解しておくことが命と財産を守るために重要です.

⇒ 「熱海土石流の上部の集水域を見える化する

⇒ 「熱海の土石流を地理院地図の2画面で見る