台風では,強風,強風による高波,高潮などが発生しますが,それとともに豪雨も非常に警戒しなければなりません.過去の多くの豪雨災害は台風と密接に関係しています.

 例えば2011年の紀伊半島豪雨災害は,台風12号によるものでした.その時の天気図は下記のようになっていました.

 この時の台風の速度は図に書かれているように時速わずか10kmという自転車よりも遅い速度でした.

 台風の風はいままでお話ししてきたように反時計回り,すなわち,中心から紀伊半島や四国に対して南東から湿った空気を大量に送り込んできます.(たとえば「大阪湾での危険な台風コース」参照)このため,紀伊半島や四国に大雨が降りますが,スピードが遅いため,その豪雨が長く続きます.
 この時は,紀伊半島の南に台風が進んできましたが,東と北にある高気圧のために台風は行き場を無くしてしまい,進んでいくことができなかったのです.台風は高気圧を突っ切ることができないのです.

 2011年の台風12号による豪雨災害は,このような条件下で発生しました.そのため,各地で河川が氾濫,また,山の斜面がいたるところで崩壊し,多くの土砂災害が発生したのでした.

熊野川の氾濫
(国土交通省近畿地方整備局)

 豪雨は記録的なもので,例えば熊野川での水位,雨量は,これまでの記録をしのぐ歴史的なものとなりました.(「 2011年紀伊半島大水害 国土交通省近畿地方整備局 災害対応の記録 」

2011年紀伊半島大水害 国土交通省近畿地方整備局 災害対応の記録

 この災害での死者は82人行方不明は16人,被害額は5100億円という大きな被害となったのでした.

 このように,台風は,その時の状況で大きな豪雨災害を発生させるということを理解して早めの情報収集が重要です.