津波の速さ

 津波の速さは,水深で決まってきます.深い方が早く,浅くなると遅くなります.
  津波の速度=(水深×重力加速度)の平方根 という単純な式です。(微小振幅波理論による長波の式) 
 5000mの水深なら時速800km,100mの水深なら時速110kmです. (重力加速度を9.8m/秒・秒として計算してみてください.このままでは秒速で計算されるので時速に変えるのを忘れないように.)
 この式をグラフにしてみると次図が描けます。

 1960年5月に,マグニチュード(Mw)9.5の世界最大の地震が南米のチリで起こりました.このとき津波が発生し,その津波が地球の裏側から22時間半かけて,日本にやってきて最大6.1mの津波となりました.日本とチリとの距離は約17,000kmです.ということは,この間の平均時速は760kmでした.
 このように,深いところでは早く,陸に近づいてくると遅くなるという性質があるため,津波は浅いところに近づいてくると深いところ進んでいる場合とくらべ速度が落ちます.そうすると,進む距離が短くなり,波の周期のうちの「波長」が短くなってきます.そのぶん,エネルギー保存の関係で,高さが高くなって行きます.すなわち,陸に近づいて浅くなってくるに従って,津波の高さはどんどん高くなっていくことになります.
 東北の東海岸では、200㎞沖に日本海溝があり、7000m以上の深い海溝になっていて、下図のように、そこからどんどん陸に向かって浅くなっています。その地形のため、日本海溝(プレート境界)付近で発生した津波は、大きく成長することになります。
(※海底断面の書き方を「日本海溝の断面図を描いてみよう」で紹介しています。)

「みんなの海図」をもとに作成した海底断面図

グリーンの式

 どれくらい大きくなるかというと、 「津波の高さは、水深の4乗根に反比例」する という計算式(グリーンの法則といいます)が提案されています。4乗根というのは、ルート(平方根)を2回繰り返すことです。例えば、水深が100 倍ちがうと津波の(最大)高さは、100にルートを2 回繰り返して、3.2倍になるというものです。水深1000m の沖合で高さ2mくらいの津波でも、水深10mの陸地近くにやってきたら6m 以上の高さに成長しているということになります。

陸上での津波の速さ

 それでは陸上に近づいた津波はどの程度の速さになっているのでしょうか?先ほどの津波の速さの式は「微小振幅波理論」といって,水深に対して振幅がとても小さい場合の条件から導き出されているので,陸に近づいて浅くなり,かつ振幅(津波高さ)が大きくなると誤差が出てしまい,単純には計算できません.しかし,実際に起こったことから速さを知ることができます.

 津波は,海底から,石や砂などを巻き上げて運んできます.東日本大震災の津波の時に宮古市田老の休耕田に140トンもの巨大な石が津波で這い上がってきました. この巨石は約500m流されてきました.このような事実を元に筑波大・千葉工大の共同研究チームによって推定された速さは秒速8m,時速にすると約30km,800m走の世界記録とほぼ同じです.(「巨大津波によって押し流された140トンの巨石」(筑波大学テニュアトラック普及啓発事業))

 時速30kmの速さでせまってきたらいくら足に自信があっても到底逃げ切れませんね.津波が来てからではなく,地震の揺れを感じたらまず逃げることが大事です.

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