津波の形は?

 前項「津波の速さ」では,津波の速さがわかりました.津波は日本海溝の深いところではジェット機並みの超高速,水深100kmでは時速110km,そして,陸上に来たあたりでは時速30kmくらいである,ということでした.

 それでは,津波の形はどのようなものでしょうか?実は,沖合にあるGPS波浪計という計器がその津波の形をとらえていました.(「GPS波浪計で捉えた平成23年東北地方太平洋沖地震津波」河合,佐藤,川口,関(土木学会論文集B2(海岸工学)Vol. 67,No. 2,2011,I_1291-I_1295)

 いかにも津波らしい形と思われるかもしれません.もう少し考えてみましょう.青い〇を付けた岩手県南部沖(釜石の沖合水深200mのGPS波高計)が最も高い津波を観測していました.ぽこっと山になった高さは6.7mでした.この間の横軸は5分くらいですね.さて,水深200mで津波の速さはどれくらいかというと,<津波の速さ=(重力×水深)の平方根>なので,時速160kmになります.したがって5分間では13kmの波長があることがわかります.

 それでは机の上で横が13000m,高さが6.7mの津波の山の形(たとえば1kmを1cmにすると横が13cm,高さが0.0067cm)を書いてみてくれますか.

 山を書けないくらい緩やかな波であることがわかります.津波は,沖合では,きたことすらわからないくらいの緩やかな形をしているのです.そのような波が,実は大きなエネルギーを持っていて,陸に来たらすべてを飲み込んでしまったのでした.

補足:三陸沖の海底地形

 上記のGPS波浪計の場所は下図のように示されています。

 この場所を「みんなの海図」からおおよその場所を推定したものが下図です。

 ピンマークの位置が沖合のGPS波浪計です。これをさらに沖合の日本海溝まで表示して、断面図を描いてみましょう。下図のように水深7000mからどんどん浅くなっていて、津波が増幅される地形であることがわかります。

※海底の断面図の書き方を「日本海溝の断面図を描いてみよう」で解説しています。エクセルを使って簡単に描けますので参考にしてください。 

→ リアス海岸での津波

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