日本初の下水道ネットワーク

 下水道ネットワークというのは,市内の下水処理場相互をネットワーク幹線で連絡することによって,下水道のリダンダンシーを高めようという計画です.一般的な下水処理のシステムは,対象エリアの水を集め,下水処理場で最終処理をして,処理後のきれいな水を海や川に放流します.したがって単一の系として処理場ごとにそれぞれ独立しているものです.しかし,いったん大災害や事故などがあって処理場が使えなくなると,そのエリアの下水は処理できなくなります.まさに阪神・淡路大震災での東灘下水処理場がそうでした.たまたま,前面に運河があったことで,仮の沈殿池が確保されたからよかったものの,それが不可能なら,大変なことになっていたと思います.

 この経験から出てきたアイデアが処理場をネットワークさせてつないでおこうという計画です.この構想は,神戸市復興計画で「シンボルプロジェクト」の中に早々と登場しています.

 具体的には,市内にある処理場(東灘,西部,垂水,鈴蘭台)をネットワーク幹線で結びます.そのネットワーク幹線は地下深くに設置されています.

  神戸市下水道ネットワークのしくみ

 このように各処理場間をつないでおくと,図のように,もし,A処理場が災害などで使えなくなった場合,A処理場に水を流さずに止めておくと,処理場に向かうルートの水位が上がります.そうすると,水圧により,BやCの処理場に汚水が流れていきます.このようにすることで,たとえ停電でも,特にポンプ機能を使わなくても市内の他の処理場で処理が可能になるのです.

 ネットワーク幹線で結ばれたことにより,災害時はもちろんのこと,常時においても,処理場間での処理水の融通が可能となるため,一時的に処理場を止めることも可能となり,メンテナンスが容易になるとともに,処理場間の処理能力の不均衡も緩和することができるようになりました.このように,社会基盤のリダンダンシーは,災害時だけでなく,常時にも有効に働きます.復興計画に構想が掲げられてから16年経過した平成23年度に,処理場間をネットワークで結ぶこの事業が日本で初めて完成しました.

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