2019年10月12日から13日にかけて上陸した台風19号は,甚大な被害を与えましたが,この台風の接近前に,気象庁は1958年の「狩野川台風」と似ているので厳重な注意をするよう促しました.しかし,61年前の台風を知る人は極めて少ないので,ここでまず,狩野川台風について概要を紹介しましょう.

狩野川台風(かのがわたいふう)
 1958年9月26日から27日にかけて日本を襲った台風(22号)です.日本に来るまでに一時は877ヘクトパスカルを記録するなど,大型で猛烈な台風でした.特に伊豆半島では台風による豪雨が引き起こした災害のため甚大な被害を受け,1000人以上が亡くなりました.その時の被害の中心が伊豆半島の狩野川であったため,台風の名称となりました.JIJIドットコムニュースに写真があります.
 狩野川は,伊豆半島中央の伊豆の国市を北上し,西海岸の沼津にいたる河川で,この災害を契機に「狩野川放水路」が造られ,下流域への洪水軽減に寄与しています.今回の台風でも台風接近前の12日午前5時40分にゲートが開けられました.下図は,国土交通省の「川の防災情報」にある図に放水路の文字を追記したものです.

2019年19号台風との経路を比較する
 狩野川台風と2019年19号台風との経路を比較してみましょう.このような作業をする場合,国立情報学研究所の北本先生が作成している「デジタル台風」というサイトが有益です.
 この中の「台風データベース メタデータによる検索」から,まず狩野川台風を見つけます.名前でも,年と号数でも検索できます.次のような画面になるので,その中のGoogle Earthというところをクリックするとkmlファイルをダウンロードできます.

 次に,2019年19号台風のkmlファイルも同様の方法で入手します.これらのファイルをGoogle Earthで重ねてみると下図のようになりました.わかりやすいようにコース線に着色しました.黄色のコース線が狩野川台風,ピンクのコース線が2019年19号です.二つの台風が,気象庁の指摘した通り,きわめて酷似していることがわかります.

  なお,デジタル台風では時刻ごとの気圧も記録されていて,kmlファイルによって見ることができます.このkmlファイルを地理院マップシートで開いてみましょう(マップシートについては「地理院マップシートで作図する」を参考にしてください).これらのデータから上陸直前の気圧は,2019年19号の方がまだ少し低かったこともわかります.

 

狩野川放水路

 狩野川台風の被害を二度と繰り返さないように,と,伊豆の国市から西に分流し,江の浦湾に至る3kmの放水路が整備されました.
 台風19号では伊豆地方に豪雨がありましたが,この狩野川放水路が整備されたことで,ここから下流の地域の1万6000戸が浸水から免れたとの試算が発表されました.(狩野川台⾵級の台⾵19号に対し、狩野川放⽔路が狩野川中下流部を氾濫から守りました(中部地方整備局10月15日速報)