地震に強い家にする

 これまでのお話を通じて,古い家は地震に対して非常に危険であるということは理解いただけたと思います.では,どのようにしたら,地震に強い家にしていけるのでしょうか.
 「震災で被害を受けた住宅」 「震度と住宅の強さ」 「新・新耐震基準=2000年基準」

 そのためには,まず,地震でどのようにして家が壊れるのかを知らなければいけません.阪神・淡路大震災の被害を調査した日本住宅・木材技術センター等の調査(「木造住宅の耐震」)によると,比較的新しい木造住宅での被害の要因として以下のようなことがあげられていました.

①耐力壁の不足や偏心:住宅の壁のうち,地震に抵抗する力を持った壁を耐力壁といいますが,その壁の絶対量が不足していたり,間口部を広くとったために特定の場所でまったく耐力壁がなかったり,不均衡になっているもの ②柱と土台との緊結不良:柱と土台をきちんと結合する必要があるにもかかわらず,ほぞ穴に差し込んだだけのものや,金物による補強がないため,柱が抜け出たとか金物があっても,施工方法が悪いもの ③筋かいの施工不良:筋かいが途中で切れていたり,端部の結合が悪いもの ④不適切な基礎構造:断面不足や鉄筋の入れ方の不良 ⑤腐食や蟻による被害がみられるもの ⑥傾斜地や液状化などの地盤に起因するもの

 このことをふまえると,地震に強い家にするには,しっかりとした基礎の上に建て,基礎と土台をしっかり結合し,壁量をバランスよく適量を保ち,筋かいや結合部の施工を良好に行う,そして,シロアリ対策や腐食防止などのメンテナンスをきちんと行う,というふうにまとめることができます.

これらの調査結果を受けて前号「新・新耐震基準=2000年基準」で紹介したように,2000年に建築基準法が改正されました.

耐震改修工事

 これらを知ったうえで,では,今住んでいる自分の家の耐震はどうしたらいいのでしょうか.それにはまず,自分の家が,地震に対してどれくらいの強さなのかを知ることがスタートになります.すなわち「耐震診断」をしてもらわなければなりません.専門家が家のすみずみまで見て評点をつけて,その採点で地震に対する強さを算定します.評点が1.0よりも少なければ,地震に対して不安がある家ということになります.

 もし,耐震性に不安があるという場合には,耐震補強工事をすることになります.この工事では,どのようなことをするかというと,個々の内容は,その家の耐震上の条件によって異なりますが,耐力壁が不足している場合は,開口部や間仕切りの壁を耐力壁に変更します.また,筋かいを入れたり,基礎と土台を結合したり,梁,土台,柱,筋かいなどの結合を金物によりしっかりと固定するというようなことを行います.

(耐震改修工事の施工例)

 この耐震改修をやるにはどの程度の費用がかかるのでしょうか?神戸市すまいまちづくり公社の「すまいるネット」にお聞きしたところ,補助金を利用したものでは年間100件以上の改修工事が行われていて,平均的な費用は180~200万円程度ということでした.工事期間については,その家の使い方や併せて行うリニューアル工事との関係でかなりばらつきが大きく,1週間くらいで終わるものから,2,3か月かかった例もあるとのことでした.

耐震補強の補助金

 もし耐震診断をしてみよう,とか耐震改修工事をしようという時には,兵庫県では補助制度があります(市町村により補助率やメニューが少し異なります)ので,例えば工事費が180万円程度とすると,自己資金がほぼ100万円で耐震改修工事ができるようです.なお,今回紹介した制度は予算上の枠というものがあるので,その範囲で補助をしてくれます.すなわち,早いもの順ということになります.年度の早めに相談しておくほうがいいでしょう.これらについての相談は,神戸市すまいるネット(電話078-222-0005)あるいは兵庫県住宅建築局建築指導課(078-362-4340)に問い合わせてください.

 なお,兵庫県や神戸市の補助制度についてはもう少し改善が必要であると思います.補助対象を昭和56年5月以前の住宅と限定しているのは,非常に問題があると考えています.すでに,大阪市では,2000年基準以前の住宅を耐震改修の補助金支出の対象としています(100万円を限度).阪神・淡路大震災の被災地では,無事であった建物もそのときに大きな揺れを経験しているのです.また,新耐震基準からすでに30年以上経過して,新耐震基準の建物といっても老朽化がすすんでいるものもあります.「震災で被害を受けた住宅」の項でも紹介したように,築30年以上となると耐震性能が低下します.大阪市同様の対応が早急に取られるように改善してほしいと願っています.

 →「家具の転倒防止」

 

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