震災で被害を受けた宅地復旧の難しさ

これまで,何回かに分けて,地震での宅地の被害についてお話してきました.これまで紹介してきたように宅地が被害を受けた時に,宅地ならではの復旧の難しさがあります.一つは,宅地を安全に戻すためには,広い範囲で安全を確保する対策が必要となる場合が多くあるということです.すでに紹介したように,大きな盛土構造全体が動くような場合には何軒もの対応が必要になります.また,液状化被害は,一般的には,自宅の真下だけの改良では難しい場合が多いのです.そして,もう一つの難しさは,宅地が「個人の資産」であるということです.上物である住宅と同様,個人の資産に対しては,公費での復旧支援は非常に難しいものがあります.

阪神・淡路大震災では,広範囲に被害があり,公道への影響があるようなケースでは,その時にあった法律の枠組みを最大限使って,公費による復旧支援を行ったケースがあります.しかし,それは2割程度にとどまり,残り8割は自費による再建となりました.その後,中越地震の宅地被害を受けて「大規模盛土造成地滑動崩落防止事業」という法律が2006年に作られて,2007年の中越沖地震でさっそく復旧に使われることになりました.そして,東日本大震災では,仙台市などの宅地被害に対してこの事業が本格的に使われるようになって,被害宅地の44%が公費助成により復旧できました.大規模造成防止事業の対象は,「宅地面積3000㎡以上10戸以上」となっています.また,この制度が適用されなかった宅地についても仙台市が復興基金を活用した独自制度で,1000万円を上限に支援する制度によりなんとか復旧されました.(どうしても復旧が難しかった宅地は,「集団移転」となりました.)熊本地震では,大規模造成防止事業の対象は少なく6%弱でした.また,液状化被害が各地に発生したため「宅地液状化防止事業」(3000㎡以上10戸以上の宅地)が行われることとなりましたが,その対象は8%弱でした.復興基金により最大1000万円の支援をしてもらう宅地が8割弱ありました.過去の被害や対策工法については「丘陵地造成宅地の地震時事前防災対策の仕組み 」(沖村孝)などが参考になります.

自分の宅地のことを知る

 このように,宅地被害への支援制度はかなり充実してきていますが,あくまでも大規模に造成された宅地です.また,この「大規模盛土造成地滑動崩落防止事業」は本来,予防的なものなので,まずは,危険な宅地を自ら知ることが重要になってきます.そこでこの法律に基づいて,市民が宅地情報を入手できるようになってきています.宅地被害は主に盛土区間および盛土と切り度の境界部でおこっているために,どの部分が盛土なのかということが重要になってきます.次の図は,神戸市が公表している大規模盛土図の西神ニュータウンの部分です.

西神ニュータウン付近の大規模盛土(3000㎡以上の盛土区域 神戸市)

 すでにいくつかの都市でこのように大規模盛土の地域がわかるようになっています.仙台市では,さらにすすんで下図のような情報が公開されています.すなわち,単に盛土区域だけでなく,盛土と切土の高さを階級別にグラデーションしてわかるようにしています.この図以外にもいつの年代に造成されたのかとか,旧地形図なども情報提供されています.東日本大震災での被害を受けてのものだと考えられますが,このような積極的な行政の情報提供があることで住民は自分の宅地の安全を知ることができます.皆さんも自分の宅地について調べておきましょう.


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