地震のよく起こる場所 :地震の2つのタイプ

 『日本は地震が多い国』で述べたように、プレート境界では、周期的に大きな地震が起こっていますが、一方でこのプレートが押す力は、陸の方にも伝わっていますので、日本列島全体が、その力で押しつけられており、内陸部でも、その力により、ときどきプレート内部が割れ、地震が発生します。 
 次の図は、東北日本を東西に横断する断面で深さ250kmまでの地震の発生状況を見たものです。

「地震の基礎知識」(防災科学技術研究所)の図に加筆

 右上が日本海溝付近で、ここから左下の日本海直下にかけて、斜め下に 段々深くなりながら震源が並んでいます。これは太平洋プレートの沈み込みに伴って発生している地震群ですが、この延長はウラジオストック下の深さ600~700kmまで追跡することができます。
 一方、これとは別に東北日本直下の地表近くにも多くの地震が集中的に発生しています。これらの地震の震源の深さは、おおむね15~20kmより浅いものです。

 このように、地震には、プレート境界に沿って発生している地震と地表近くのプレート内部でプレートが割れて起こる活断層型の地震の2種類があります。プレート内部が割れた部分は「断層」となりますが、同じような場所が活動することが多く、そのような場所を「活断層」と言います。ただ、この「活断層」で起こる頻度は、千年から数千年に1 度というレベルで、プレート境界での地震よりもかなり頻度が少なくなります。また、地震の規模(マグニチュード)もプレート境界よりは小さいのですが、断層が近い場合、被害は大きくなります。阪神・淡路大震災を起こした兵庫県南部地震は、この都市直下の活断層による地震でした。震度7は1948年の福井地震のあと、はじめて定義されて、最初の震度7が阪神・淡路大震災でしたが、それを含めて2024年1月の能登半島地震まで、震度7の地震は6回発生しましたが、そのうち5回は活断層型の地震でした。

 活断層型の地震についてはこのホームページの「活断層の地震-1」以降をご覧ください.

プレート境界の地震

 太平洋プレートは、東から西に沈み込む運動を続けているので、その部分にどんどんひずみが溜まっていきます。そしてそれが限界に達したときに、そのひずみを解消する動きを行います。それがプレート境界での地震、すなわち上の図で斜め下に伸びている地震です。プレート境界では、東北の沖合の日本海溝や東海から南海にかけた南海トラフのように、海底が深い溝のようになっています。そのため、「海溝型地震」ともいわれます。

JODCの図に加筆

 日本の周囲の海底の地形は上の図のようになっています。東北地方の太平洋側には太平洋プレートが沈み込んでいるために日本海溝という深い海溝になっていて、それは南で伊豆・小笠原海溝につながっています。日本海溝は非常に深く、7000m ~ 8000m もの深さがあります。日本海溝の東側から移動してきた太平洋プレートが年間10cm くらいのスピードで沈み込んでいます。一方、静岡県沖から四国沖にある南海トラフは日本海溝よりも浅く、4000m ~ 5000m くらいです。トラフというのは、英語のtrough で、海溝(trench)よりもやや浅いことからこの名になっています。ここには、南から移動してきたフィリピン海プレートが年間3 ~ 4cm の速さで沈み込んでいます。これらのプレート境界では,かなり規則的に頻繁に地震が起こるとされています.
 南海トラフでの地震は,次の図のようにおおよそ100年周期で繰り返し発生することが明らかとなっています.

内閣府南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ第1 回資料(平成24 年4 月)

 

プレート境界での地震と活断層での地震の違い

  この二種類の地震は、いくつかの違いがあります。一つは、発生頻度の違いです。プレート境界地震は100 年に1 回程度ですが、活断層での地震は、一つの活断層の活動度は、1000 年~ 1 万年程度で、頻度は、一桁から二桁小さくなります。また、マグニチュードの大きさも、最大値で比べると、プレート境界での地震の方が大きいです。東北地方太平洋沖地震は、マグニチュード9の巨大地震でした。これまでの最大のマグニチュードは1960 年のチリ地震でマグニチュード9.5 でした。
しかし、活断層の地震は,直下型はすぐ近くで起こるので、マグニチュードが小さくても震度が小さいわけではないことに注意が必要です。なお、活断層での地震の日本での最大マグニチュードは、1891 年10 月28 日に起きた岐阜県の濃尾地震で、この地震のマグニチュードは8.0 でした。このときは、根尾谷断層という巨大な断層が十数キロメートルにわたり出現しました。
 1995 年の兵庫県南部地震はマグニチュード7.3 でしたが、この地震の直前の活動度の評価を現在の手法でさかのぼって算定したところ、30 年以内の確率が0.02~ 8% と非常に低いものでした。この活断層の平均活動感覚は1700 年~ 3500 年とされていて、直下型活断層での地震を予測することの難しさを示しています。
 ちなみに,関西で懸念されている「上町断層」の活動度の評価は,今後30年以内に2%~3%となっていて,結構高いので,要注意です.
 ある活断層が動いたらどのような震度になるかなどを防災科学技術研究所の地震ハザードステーションJ-SHISで知ることができます.詳しくは「地域の地震確率の見える化」を見てください.

 この2種類の地震は,揺れ方も異なります.活断層での直下型地震は、すぐ近くからくるので、地震の揺れ方として、短周期の要素が多くなると考えられます。また、揺れの持続時間も短いです。一方、プレート境界での地震は遠くから来るので、長周期の成分が多くなります。また、揺れの持続時間も長くなります。大きな揺れが1 分以上続いたらプレート境界での地震と考えて、対応を考えなければなりません。

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