自分で作る防災マップ 2
ハザードマップの留意点
第1回目は,防災マップを作る最初のアクションとして,ますは,ハザードマップを入手しましょう,というお話をしました.しかし,役所が作ったハザードマップを入手しただけでは実は十分ではありません.いくつか留意点があります.
1.ハザードマップはすべてを網羅できていない
ハザードマップは,土砂災害や,洪水,津波など,比較的地図にしやすいハザードを地図化しています.いいかえると,それ以外の,地図化しにくいハザードに対する情報は,自分で収集するしかありません.そのために必要なことは,災害が起きたらこのまちはどうなるだろうか,ということに対する「想像力」です.もし,地震が起きたら,もし,大火が発生したら・・・などの想定に対して,自分で,どこが危険なのか,何が危険なのかを想像できることが重要になります.そのためにも,防災への基礎的な理解力「防災リテラシー」が重要になります.
2.ハザードマップに表現されていない「危険」
ハザードマップは,ある程度当たる場合が多いですが,かならず,ピタッと的中させることができない,ということを理解しておくことも重要なことです.洪水のハザードマップを作成する立場に立ってみるとわかることですが,計算機でシミュレーションするときに,屈曲点とか断面変化点などはっきりとわかる場所で破堤させるということは,たぶん行われるとはおもいますが,例えば,長い延長のすべてが,同じ100年に一度の豪雨に対応するように整備された同じ強度の断面をもっている場合,どこで破堤させるかとなると,結局,ある一定の間隔で行うしかないでしょう.破堤場所はなかなか予測がつかないのです.特に,破堤した場所付近では,単に水位が急激に上がるだけでなく,強い流れも発生し,被害が極端に大きくなってしまいます.ハザードマップには,そのような危険も隠れているということを知っておかなければなりません.
また,ハザードマップには,大きな災害は考慮されていますが,頻度が多い内水氾濫などは,掲載されていない,あるいは検討もされていない可能性があります.しかし,小さいよく起こる災害を知る手だてはあります.そのような災害は,地元の人たち,物知りの古老の方々に聞けばわかるでしょう.地域の人たちの頭の中にあるハザードマップを見える化することも重要です.
3.イメージをすることの重要性
最初の項目とも重なりますが,ハザードマップを見て,あー,こうなんだ,と簡単に片づけないで,それをイメージすることが極めて重要です.例えば,次の図を見てください.
これは,芦屋市の山際の市街地のハザードマップです.幾筋もの土石流の警戒区域が示されています.そして,それらは,途中で止まっています.ということは,この黄色い色が無くなった下流のエリアは土石流が発生しても何も被害がないのでしょうか?ここですべて止まってしまう?そんなことはあり得ません.土石流の警戒区域は,渓流に沿って,ある程度の勾配(2%)よりも急で,土石流によって危害をもたらされると予想される土地の範囲を示しています.しかし,そこまで流されてきた水や土砂はすべてがとどまってしまうわけでなく,その図の着色部を過ぎてもなお,低い方に流れていきます.したがって,ここに着色されていない下流の地域も,災害時には濁流に襲われているであろうということは,よく考えるとイメージできることです.また,「甲南小学校水災記念誌」という冊子を読むとこの付近での阪神大水害当時の様子が子供たちや先生の作文でよくわかります.(当研究所ホームページ「阪神大水害3」を参照してください)このように,ハザードマップをもとに具体的なイメージまで高めることが,ハザードマップを自分のこととして理解していくうえで非常に重要です.
→「自分で作る防災マップ 3」