フェーン現象とは?
この記事を書いている2025年3月4日現在、大船渡市での山林火災は、依然衰えを見せずに燃え広がっています。市域の8%が燃えてしまったという報道もあります。この火災の一因となったのが「フェーン現象」です。
2016年12月に起きた糸魚川大火でもフェーン現象が原因の一つと指摘されました。
では、フェーン現象とはどのようなものでしょうか?フェーン現象とは、湿潤な空気塊が山を越えたときに、手前で雨や雪となって水分が放出され、乾いた空気が山を下りていくときに元の温度よりも上昇している現象です。「フェーン」という言葉は、ヨーロッパのアルプス山脈の麓にある「フェーン(Föhn)」という地方で吹く、乾燥した暖かい局地風からきています。
山賀 進先生の「空気の上昇と雲の発生」では詳しい解説がありますが、かなり専門的なので、それを元にわかりやすく説明して見ます。
下図のように、山裾から風が吹いて山を越えていく単純なイメージを考えます。
図のように、上空に空気が上がると大気圧が低くなるので膨張します。そうすると大気の温度が低くなります。これを断熱膨張と言います。この空気には水蒸気も含まれています。乾燥した空気なら上昇するとき100mにつき1°C、大気の温度が下降していくのですが、水蒸気が含まれているため、温度の低下とともに飽和水蒸気量を超えてしまうため、空気の状態の水分子の一部が液体の「水」に変化します。これを凝結と言いますが、そのとき、水分子は雲になって凝結熱が発生します。その結果100mにつき0.5°の温度低下になります。できた雲は、雨(雪)として山を越えるまでに地上に降ります。
雨や雪を降らせた後、乾燥した空気塊が山を越えて下がっていきます。下がるにつれて大気圧が高くなるので圧縮され温度が高くなります(これを断熱圧縮といいます)。この結果、乾燥した空気が下降するとき100mで1°C上昇していきます。
以上から、往きよりも帰りの方が上昇率が高い分、山を下りた空気は前よりも温度が高くなります。これがフェーン現象です。以上の説明から、山が高いほど前後の温度差は大きい、すなわち地上での温度がより高くなることがわかると思います。
東北地方では、冬は大陸方面から風が東北地方に吹きますが、東北地方の背骨部分には山岳地帯があり、太平洋側にやってきた風は、その山並みを下りてくるため、フェーン現象となって乾いた暖かい空気となっています。糸魚川の場合は、夏の南西の風が山岳地帯を乗り越えて暖かい空気としてやってきました。
大火災の原因にもなる「フェーン現象」に十分注意しないといけません。