蓄電池と自然エネルギー
電気がいかに今の世の中で不可欠なものなのかは,災害のたびに思い知らされます.2018年9月の北海道胆振東部地震での北海道のブラックアウトや2019年台風15号の千葉県での長期停電など,たびたび,災害時の電力の問題が発生しています.
一方,環境の問題でも電力の問題は大きくクローズアップされていて,2011年の東日本大震災での原発事故以降,特に自然エネルギーへの期待が高まってきています.しかし,自然エネルギーは,雨の日に発電できない太陽光発電や風の弱い日に発電しない風力発電など,不安定性があり,いわゆるベース電源にはなりえないとされています.
発電の同時同量の原則
この問題を正しく理解するためには,発電における「同時同量の原則」ということをわかっておく必要があります.発電して消費する一つの体系の中では,発電した電力は,同時に同じ量が消費されている必要があります.もし,発電量よりも消費の量が多いと,周波数が変化して安定した電力でなくなり,機器の破損などを引き起こしてしまいます.
自然エネルギーは,天候により不安定になるために,これに頼っているような場合は,安定した供給ができずに最悪の場合,停電してしまうことになります.そのため,「ベース電源」となる安定した電力供給の仕組みが必要ということが言われているのです.
蓄電池の役割って何(沖縄本島初の「蓄電池付きメガソーラー」)
大容量の蓄電池との組み合わせ
ところがここにきて,この問題を解決する切り札になるのではないかという技術が実証されてくるようになりました.それが,太陽光発電と巨大蓄電池の組み合わせです.すでにこの方法でいくつかの事例が登場しています.その一つが,ハワイのカウアイ島の「ラワイプロジェクト」です. カウアイ島に設置された世界最大規模の「太陽光+蓄電池」プロジェクト(日経X-TECH)
これはメガソーラーとリチウムイオン電池の組み合わせで,需要ピーク時に5時間放電を続けられるようになっているとのことです.しかも発電の費用も極めて安価にできるということです.
ここカウアイ島のような場合はこの方式でかなり有効なようですが,実際に,長期の雨があるような地域などでどの程度の効果があるのかとか,都市部でも実用性はあるのか,などこれからいろいろと検証されていく必要があるとは思います.
ただ,災害対応ということで言うと,2018年9月の北海道胆振東部地震でのブラックアウトでは,ブラックアウトしてから立ち直るのにも電力がいるのですが,道内のすべての発電所が停止してしまい,立ち上げに必要な電源の確保に非常に苦労して再起が遅れました.そのようなときに,このような巨大な蓄電池を保有していれば,非常に有効であるとおもいます.この視点からも,ぜひ検討を進めてもらいたいと思います.
(参考)→重要な社会基盤のリダンダンシー