リモートで被災地の今を若者に紹介

防災リテラシー研究所フェロー,武庫川女子大学教育学部教員の吉井美奈子です。

 先日、東日本大震災から10年目を迎えました。それぞれの場所で、それぞれの想いを持って過ごされたかと思います。10年目は”区切り”ではなく、これからも繋げていける取り組みを試行錯誤していきたいと考えております。

 毎年、8月頃と3月には、学生や現場の教員の方々を連れて東北の被災地視察に行くようにしているのですが、今年はコロナ禍で思うように引率できず、もどかしい気持ちでおりました。

 そこで、今年の3月11日は、被災地と動画で繋がれないか?と、私が被災地に出向き、テレビ電話を使って、関西にいる人たち(今回は試行なので私が直接知っている若者中心)に中継する形で繋げることを試みました。

 中継できたのは、仙台市荒浜地区(荒浜小学校)、宮城県石巻市(大川小学校、日和山公園、こども∞感ぱにーの広場、仮設住宅があった場所、復興住宅等)などです。

 全員が一斉に繋がれたわけではありませんが、中継時間にアクセスできなかった人には、写真や動画を観られるようにしました。また、子ども支援をされているこども感ぱにーの和子さんとは、関西にいる学生や卒業生と話をする時間もとることができました。

日和山公園から中継: 以前の写真と現在の様子を比較して説明しています

 感想を聞きましたが、みんな喜んでくれており、中継で参加できなかった人も、後で動画や写真をみてくれたようでした。印象的だったのは、ある学生さんの感想です。

 私は知らなかったのですが、その学生さんは東日本大震災の被災者で、今は関西にいるけれど、3月11日は誰も気にも留めていないのではないか?と周囲の雰囲気を感じとっていたそうです。その学生さんから「自分と同じ世代の若者が、こんなにも3月11日の事を気に留めてくれていることが分かって嬉しかった」という感想をもらいました。

 被災者でない人たちは、どうしても1月17日や3月11日、〇年目等の機会で思い出す、という感じになってしまいがちですが、被災者にとっては、ずっと毎日続く日常であるし、忘れられることではない、ということを再認識しました。

 それでも、思い出すきっかけがあることは大切だな、と思います。そして、今も被災地に心を寄せているよ、ということも表現していくことも大切なのだな、と感じました。

 今回の企画はコロナ禍がきっかけでしたが、これまで、交通費や都合がつかなかった、という理由で参加できなかった人も、リモート被災地訪問がきっかけで、また実際に観てみたいと思ってくれる人が増えたらいいな、と思います。

2021年3月11日の日和山公園

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