被災した真備町を訪問して 3
倉敷市を訪問してお話を伺った2月8日,ちょうどその日に「真備地区復興計画素案」が公表されました.この案の一番最初には,「まちを水害から守る防災対策」として小田川,および高梁川水系の安全性向上が書かれています.まちの復興にとっても,そして2度と同じ災害を起こさないためにも,当然,まず,河川の安全性が重要であるということは言うまでもありません.
高梁川合流部の危険性
真備町を東西に流れる小田川は,高梁川の支流で,まちの東で高梁川に合流しています.次の図は,地理院の航空写真に河川部に着色したものです.薄い色が小田川,南北の太い流れが高梁川です.
北から本流の高梁川が流れてきて,小田川が 西からそこに流れ込んでいます.合流の形状はT字型ともいえる形になっています.この合流部では,高梁川の河床勾配は0.12%,それに対して,小田川の河床勾配は,0.06%です.小田川は,河床勾配の極めて緩い川で,いいかえると,西から東への流速は極めて遅く,そこに流速が速い河床勾配が 2倍急な大きな川がT字型にぶつかっているわけです.そうすると,上からの流れが,小田川に沿って逆戻りすることは容易に想像できます.これを「バックウオーター現象」といっています.そして,「平成30年豪雨災害 真備町の水害1」でも紹介しているように,小田川周辺の真備のまちは川の土手よりも低い土地に多くの人が住んでいます.そのため,過去にも何度も水害に遭ってきていたのでした.
このため,合流部の改良計画は古くからあり,平成19年には基本計画が定められていました.しかし,実際には改修工事が行われないまま,今回の災害にあったのでした.改修工事が進まなかった一つの要因として地元の反対があったことが報じられています.(真備町浸水、50年間棚上げされた「改修計画」東洋経済)
合流部の改良方法は,現在の合流点をいったん締切り下流で合流させることで,合流を速やかにします.これにより合流点での水位が5m以上低くなるとされています.
小田川護岸の補強
また,復興計画素案には,小田川の河川沿いの道路になっている護岸を7m幅に広げるとされています.これにより,護岸の強度を増し,また,災害時の工事対応もしやすくなるとしています.現在,小田川では,写真のように,決壊部の復旧にあわせて本格的な工事もすすめられている場所もあります.高梁川と小田川は国管理の河川で,改修工事は国が行います.
一方,小田川に入り込む小さな川が何本かあり,これらの河川堤防も破堤したところがありました.これらは岡山県の管理ですが,こちらは,現状では,まだ,ビニールシートで覆っただけの仮復旧の場所もあり,地元では復旧工事の遅れを心配しています.